第一回 リトリートを開催しました!
2024年11月17日(日)から19日(火)にかけ、門司港レトロ旧大連航路上屋(福岡県北九州市)にて、学術変革領域研究(A)「潜在空間分子設計」第1回リトリートを、北九州市および北九州観光コンベンション協会の協賛のもと開催しました。本会は、本学術変革領域研究に関わるケミカルバイオロジー、情報科学、有機合成のいずれかの背景を有する研究者が一堂に介し、互いの研究内容を共有し親睦を深めつつ、共同研究の契機を作成することを目的として企画、実施されました。参加者は76名で、6件の技術紹介、1件のチュートリアルセミナー、3件の共同研究提言のほか、15件の口頭発表、および47件のポスター発表が行われました。
各々の研究背景が全く異なる研究者達の協働を目指すため、その壁を超えた理解と交流の実現が課題であり、運営名およびプログラム面で様々な工夫を行いました。会場としては、比較的大きなホールを利用することとし、ポスターを会場内に設置することで常時閲覧可能とするとともに、懇親会後にもポスターを閲覧する機会を設けました。さらに、ポスターセッションは3回に分けて行い、議論時間を十分に確保しました。またプログラム面では、研究内容を共有し議論する口頭発表、ポスター発表に加えて、多くの技術紹介や共同研究提言に関する発表を行いました。これに先立ち、ケミカルバイオロジー班および有機合成班は各々の研究内容と期待する共同研究内容を同一様式でまとめたファイルを作成し、事前に共有しました。これらの工夫はリトリートの目的達成に大きく貢献したものと考えています。
初日の開始早々に、学術変革領域研究「光合成ユビキティ」の代表である栗栖源嗣先生(大阪大)から、大阪大学が保有するMicroED技術の紹介がありました。本技術は特に低分子の構造決定に有効だと期待されており、特に有機合成班の注目を集めました。その後、潜在空間構築の要の技術の一つであるFRATTVAEについて、実際に研究を進めている学生を講師としたチュートリアルセミナーを実施しました。情報科学を専門としない研究者もPCを実際に操作し、その技術を実践的に理解しました。その後のポスターセッションに続いて、情報科学班に所属する杉本学先生(熊本大)、岩田浩明先生(鳥取大)、鎌田真由美先生(北里大)から、それぞれ保有の独自技術と共同研究の提案が行われました。その後、ケミカルバイオロジー班の荒井緑先生(慶應大)および有機合成班の大森建先生(東京科学大)から、現在進めている共同研究の進捗報告と提言が行われました。以上のプログラムの後、旧大連航路上屋内の異なる部屋へ移動し開催した懇親会では、関門海峡の魚介類などが振る舞われ、大いに盛り上がりました。さらに、その後会場となったホールに戻り、引き続き軽食とともに議論を深める場を提供しました。2日目は班員の口頭発表に続き、大上雅史先生(東京科学大)からの技術紹介と共同研究提案、並びに上田実先生(東北大)からの共同研究提言が行われました。ポスターセッションと昼食の後、エクスカーションとして希望者は関門海峡周遊船に乗船し、海峡周辺や巌流島の景色を楽しむとともに、関門海峡の荒波を味わいました。その後、ポスターセッションと口頭発表を経て、JR門司港駅2階にあるレストランにて懇親会を開催しました。最終日は班員の口頭発表を行い、最後に領域代表から今後の予定等に関する連絡があり、正午には全プログラムを完了しました。
本会の会場となった門司港はアカデミックな会合の場として使われることがこれまであまりなく、会場選定等に苦労する面もありましたが、北九州市観光コンベンション協会および現地スタッフのご協力もあり、魅力ある伝統的な建物での会議を実現できました。本会場は、普段とは異なる環境でアイデアを膨らませるリトリートの概念に適しており、生産性向上に寄与できたものと考えています。
一般的な研究進捗報告会に加え、多数の技術紹介や共同研究提言の場を設定した本リトリートは、これから着手される共同研究のきっかけを多く生み出したものと期待されます。これは運営側の努力のみならず、個々の参加者が共同研究に高い意欲を持ち、これを踏まえた発表を行ったことによって達成されたものと考えています。この会の実施が領域内外の共同研究を大きく推進できることが期待されます。
丹羽 節(九大院薬)