第3回公開シンポジウムを開催しました!
令和7年5月29~30日にかけて本学術変革領域研究(A)主催の「第3回公開シンポジウム」を慶應義塾大学日吉キャンパス藤原洋記念ホールにおいて開催いたしました。梅雨入りを目前として小雨がパラつく天気でしたが、当日は100名以上の参加者にお越しいただき、最新の研究成果の口頭発表や多くのポスター発表が行われ、小雨を吹き飛ばすほどの熱い議論が交わされ盛会となりました。


初日には、菊地和也領域代表(阪大)による挨拶の後、A班(生物活性評価班)の上田実先生(東北大)による植物天然物の構造展開を基軸とする分子糊研究の発表、公募班の古澤力先生(理研)による最新の研究成果の発表が行われました。C班(合成班)の塚野千尋先生(京大)からは、計算科学による構造提案を元にした生物活性化合物の合成と活性評価について、公募班の徳山英利先生(東北大)、西川俊夫先生(名古屋大)、石川勇人先生(千葉大)から、複雑な天然物の全合成研究の最前線、天然物を利用した新規反応の開発、また共同研究の成果も含めた合成化学研究の進捗状況が紹介されました。特別講演では、ケミカルバイオロジー研究の第一人者、上杉志成先生(京大)から、抗腫瘍免疫のケミカルバイオロジーと題して、最先端のご研究内容をご講演いただきました。その内容は意外性の連続であり、免疫チェックポイント阻害を後押しする生体内リガンドミミック化合物の開発や、液-液相分離の新たな検出方法に、聴衆一同息をのみました。初日のシンポジウム終了後の意見交換会には68名の参加があり、積極的に情報交換が行われました。シンポジウム2日目は、ポスター発表が行われ、共同研究推進のためのディスカッションも盛んに行われました。その後、ホールに移動し、B班(情報班)の大上雅史先生(東京科学大)より、計算科学をベースとした最新の成果と共同研究の実施例が紹介され、公募班の杉本学先生(熊本大)、岩田浩明先生(鳥取大)から、電子状態インフォマティクスなどを用いた最新モデルについての成果が発表されました。2日間を通して、質疑応答やディスカッションが活発に行われ、「化合物潜在空間」を中心とした新学理の構築に向け、力強い前進となりました。
本シンポジウムが、本領域のさらなる発展の基礎作りに貢献できたのなら幸いです。最後になりましたが、招待講演者の先生方、本シンポジウムの計画を行い、運営をサポートいただいた事務局の皆様に感謝申し上げます。
(荒井 緑)



第3回公開シンポジウム プログラム (慶應義塾大学日吉キャンパス藤原洋記念ホール)
2025年5月29日(木) | ||
13:00~13:05 | 開会 | |
13:05~13:20 | 植物ホルモン受容体に対してサブタイプ選択的に作用する合成分子糊の開発 | 上田 実 (東北大学大学院理学研究科) |
13:20~13:35 | 化合物潜在空間の構築による薬剤耐性進化を抑制する手法の構築 | 古澤 力(理化学研究所生命機能科学研究センター/東京大学理学系研究科) |
13:35~14:05 | 休憩 | |
14:05~14:20 | 機械学習により選抜された新規PKCリガンド候補化合物の活性評価 | 塚野 千尋(京都大学大学院農学研究科) |
14:20~14:35 | 海洋アルカロイドDiscorhabdin類の網羅的合成 | 徳山 英利(東北大学大学院薬学研究科) |
14:35~14:50 | 海産天然物アプリシアトキシンの網羅的合成による実空間分子の拡張 | 西川 俊夫(名古屋大学大学院生命農学研究科) |
14:50~15:05 | 天然物が生み出す非古典的水素結合ネットワークの理解 | 石川 勇人(千葉大学大学院薬学研究院) |
15:05~15:35 | 休憩 | |
15:35~16:35 | 特別講演 抗腫瘍免疫のケミカルバイオロジー | 上杉 志成 (京都大学化学研究所 教授) |
16:35~16:50 | 閉会 | |
17:00~19:00 | 意見交換会 | |
2025年5月30日(金) | ||
9:45~10:45 | ポスター発表(前半) | |
10:45~11:45 | ポスター発表(後半) | |
11:45~12:05 | 休憩 | |
12:05~12:20 | bRO5化合物の潜在空間構築と応用のための情報科学 | 大上 雅史(東京科学大学情報理工学院) |
12:20~12:35 | 量子化学的化合物潜在空間の構築と応用 | 杉本 学(熊本大学大学院先端科学研究部) |
12:35~12:50 | 低分子化合物評価のためのADME-AIモデルの構築と可視化解析 | 岩田 浩明(鳥取大学医学部) |
12:50~13:00 | 講評 | 文部科学省学術調査官 和久 友則(京都工芸繊維大学) |
閉会 |